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東京第一陸軍造兵廠・十条工場

現在の所在地:北区十条台

現状:自衛隊十条駐屯地、北区立中央公園、東京成徳大学、都立王子看護学校、区立十条中学校、都営王子住宅、都立王子母子住宅など


 北区には団地や学校、スポーツ施設など敷地面積の広い施設が多く立地しているのだが、それは区の面積の約1割が旧軍用地だったからで、終戦後にそれぞれが時代の波を受けながら一部を除いて民間向け施設へ転用されていった経緯を持つ。

 埼京線と京浜東北線に挟まれた十条台や王子本町一帯はかつて東京第一陸軍造兵廠(略称「一造」)十条工場の敷地だった所で、ここでは小銃、機関銃、通信機器、レンズ類、信管、火薬、弾薬などが製造され、戦後は自衛隊の駐屯地を始め、団地、学校、公園などへ変身を遂げた。



  

 左:275号棟
 中:「殉職慰霊碑」(稲荷公園内)
 右:「産業考古学探索路」案内板


 以前工場として使われていた明治期から大正期の赤煉瓦造りの大きな建物が、自衛隊の駐屯地内に幾棟も残っていたのだが、補給統制本部の再配置に伴いその多くが壊されて新しい建物に建て替えられてしまい、現在残っているのはいくらか小振りの275号棟のみである。この建物があるエリアだけは自衛隊再配置の際に北区へ譲渡されたため、辛うじて取り壊しの憂き目に遭わずに済んだのである。
 北区ではこの土地に新たな中央図書館を建設する予定で、当初は完全取り壊しの上で着工するつもりだったようだが、市民運動の甲斐があってどうやら何らかの形で保存されるらしい。しかし275号棟がそのまま残るか否かは不透明な情勢だ。関東大震災にも空襲にも耐え残った頑丈な造りで、かつ近代建築の貴重な現存物ゆえに、完全な形での保存が望まれる。近現代史の教育、とりわけ疎かになりがちな戦争に関する教育にも有益だろう。

 旧工場敷地の北東隅には工場の鎮守である四本木稲荷神社が祀られていたが、神社は滝野川へ移って跡地は現在公園となっており、そこには木陰に隠れるように「殉職慰霊碑」だけがひっそり建っている。詳細は不明だが、おそらく危険物の製造過程で亡くなった従業員を追悼するものかもしれない。
 なお同公園内には北区により「産業考古学探索路」案内板が建てられ、付近に存在した近代の工場群についての解説がなされている。これを読むだけでも、いかに一帯が軍需産業の盛んな土地だったかを知ることができる。

  

 左:十条中学校の外壁。線路側
 右:擁壁の内側。コンクリの剥がれた箇所から煉瓦がのぞいている

 

 左:旧本部庁舎 現在は北区文化センター
 右:王子母子住宅敷地の縁に残る境界石


 都内の他の旧軍遺構と同様、十条工場も多くが取り壊されているが、一部の現存物は今でも軍事は全く関係のない状態で活用されている。

 埼京線十条〜板橋間の線路の東側に沿って高いコンクリートの擁壁が聳えている。この壁の向こう側には区立十条中学校と王子看護学校が建っているのだが、このうち中学校側からこの壁を見てみると、部分的にコンクリートが剥がれており、工場時代の赤煉瓦が覗いている。さすがに煉瓦を剥き出しにしておくのは倒壊の危険があるのだろう、コンクリートで覆って補強した訳である。フェンスが張ってあるとはいえ、工場の頃の高い塀が校庭の壁へ転用されることにより、上手い具合に生徒が使うボールの飛逸を防いでいる。

 工場の敷地の南側は現在北区の王子中央公園として転用されているが、ここの中心的な建物が北区文化センターで、かつては一造の本部庁舎であった。昭和5年に建てられたもので、いかにも戦前のお役所的な外見ゆえに、今でも撮影のロケ地としてしばしば使われている。
 工場敷地は戦後米軍に接収されてTOD(Tokyo Ordnance Depot)となったが、ベトナム戦争時にはこの建物が野戦病院として使われたため、これに抗議する反戦派がベトナム戦争の停戦を訴え、ここでデモ行進をした。
 その後接収は解除されて北区へ返還され、今では文化センター兼図書館として、この建物が負ってきた歴史を感じさせること無く、ほのぼのとした空気のもとで活用されている。
なお、ここから東へ行って公園を出たあたりに建っている都営の王子母子住宅と王子本町住宅の間を抜ける道路沿いに、「陸軍用地」と彫られた境界石が残っている。唐突にニョキっと生えているように建植されており、一見すると小さなお墓か馬頭観音のようにも見えるのだが、サイズがサイズだけに犬のお手洗いとして使われているようにも見受けられる。これもある意味で、戦争遺物の平和活用なのかもしれない。


撮影地データ


275号棟
十条台1-4

殉職慰霊碑
十条台1-4(稲荷公園内)

「産業考古学探索路」案内板
十条台1-4(稲荷公園内)

赤煉瓦壁(外壁)
十条台1-9(十条中学校)

旧本部庁舎
十条台1-2-1(中央公園文化センター)

境界石
王子本町2-31



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